便秘

便秘におすすめの市販薬は?消化器専門医が本気で考えてみた、市販下剤おすすめ5選

mitsuguma

高齢化社会により、便秘に困る人は爆発的に増えています。

そもそも便秘の方とは、

ガイドライン1)の定義を簡略化すると

  1. 2日に1回以上のペースで排便がない方、
  2. 毎日排便があっても便が硬かったり、残便感がありすっきり出せない方

要するに、満足する排便ができない方が便秘と定義されています。

便秘で問題となるさまざまな事実・研究結果があります。一部を紹介すると

  • QOL(生活の質)の低下
  • 労働生産性の低下2)
  • 死亡率が上昇する3)
  • 他の臓器の病気、特に命に関わる、脳卒中や心血管系の病気の発症4)

便秘は長期的な影響だけでなく、便を出そうといきむ(踏ん張る、力を入れる)行為は急激な血圧の上昇をもたらすことがわかっており(血圧は一時250mmHgを超えるとも言われています)、多くの問題につながります。

すなわち、排便はしっかり定期的になくてはならないだけでなく、
定期的にあってもいきんで無理して出すではいけません

便秘が続く方は医療機関に受診するのが理想ですが

  • 便秘で困っているけど通院する時間がない、あるいはすぐに通院できない。
  • 市販の下剤は種類が多く、どれを選んだらいいかわからない。

といったことでお悩みの方に

消化器専門医で、毎日のように便秘患者を治療しているミツグマが、市販だとどの下剤がいいのか、本気で考えてみました。

使いやすさと、副作用やリスクを踏まえ、5種類に限定して、使用順番についても解説します

Q

まず始めに、市販の薬剤を使用する上での注意点

  • 薬剤の効果は人それぞれで、またすぐに効かないものもあります。
    少量の用量から、2-3日は効果が出なくとも様子を見ましょう。

    よくあるのが、「1-2回使ったけど、便が出なかったからもう飲むのをやめてしまった」という方です。
    効果が出るまで時間がかかる場合があり、強い症状がない限りは3日以上は待ちましょう。
  • 妊娠授乳中の方は、使用前に原則産科医師に相談しましょう
  • 便秘に関して医師に相談したことのない方や、普段お薬をもらっている医師がいる方は、一度医師に相談しましょう。

    医師に相談せず使用を続けると、
    大腸がんが潜んでいながら長期にわたり市販薬で対応してしまう
    他のお薬との相互作用で予期せぬ副作用が出る

    と言った、本来であれば未然に防げるおそろしい事態につながります。

酸化マグネシウム

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【第3類医薬品】【ロート製薬】スラーリア便秘薬30錠
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どれも同じく酸化マグネシウムですので、どれか一つにしてください。

薬剤の特徴

  • 便の水分を増やして便を大きくし、軟らかくして排出する下剤
  • 実際の医療現場でも第一選択の一つ
  • 刺激が少なくお腹が痛くなりにくい、なんといっても耐性も生じないので、常用しても問題になりにくい
  • 妊婦でも多用されており、妊娠中の方にも比較的安心

といった特徴があります。

副作用や、使用上の注意点は?

  • 高齢者や、腎臓に病気をお持ちの方は、必ず医師に相談を!
    高齢者(68歳以上)、腎臓に病気がある人はマグネシウムが溜まり、
    ふらつき、めまい、徐脈などの症状が出現することがあります5)
  • 胃酸と反応し効果を発現するお薬であり、胃薬を飲んでいると、効果が薄れる場合があります。

整腸薬

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3種類もの整腸生菌を配合しており、実際の医療現場でもよく使われる薬剤です。
生後3ヶ月から服用可能です。

【指定医薬部外品】強力わかもと 1000錠

薬剤の特徴

  • 下剤のように便を出す作用は強くないですが、腸内環境が悪い方だと改善により腸の正常な蠕動が促される効果や、便秘に伴う腹痛や不快感を改善する効果が期待できます。

副作用や、使用上の注意点は?

  • 有害な副作用はほとんどないですが、種類によってワーファリンなどの抗凝固薬、甲状腺の薬との飲み合わせが悪い場合があります。
  • 単に便回数が少ない、便が硬い、残便感に悩む方には効果がないかもしれません。

ピコスルファートナトリウム水和物

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  • 1~3錠で用量幅が広く、調節しやすい。
  • 15歳から使用可能。

薬剤の特徴

  • 腸管を刺激し、蠕動を促進。水分吸収を抑制します。
  • いわゆる、刺激性下剤と言われています

副作用や、使用上の注意点は?

  • 効きは一般的に良いですが、依存性や耐性の懸念があります。
    特に長く使うと、腸の筋肉がうまく緊張しなくなる可能性があると言われています(データの根拠は乏しいです)。
  • 刺激により腹痛が起きやすいため、腹痛や腹部不快感を伴う便秘には使用しないこと
  • 少量から開始し、必要であれば徐々に最大容量まで増やすこと
  • 週2回までの使用としましょう、2ヶ月以上続ける場合は医師に相談を!

ビサコジル

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  • コーラックはいろいろな種類がありますが、コーラックファーストは1錠量が小さく、4錠まで使用可能な点で、用量調節しやすい。
  • 11歳から使用可能。

薬剤の特徴

  • ピコスルファートナトリウム水和物と同様で、刺激性下剤であり、基本的な特徴は同様です。

副作用や使用上の注意点は?

  • ピコスルファートナトリウム水和物と同様。
  • 牛乳や胃薬はコーティングを溶解させてしまうため、1-2時間は間を空けること。
  • 噛み潰したりせず、飲み込むようにする。

大建中湯

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薬剤の特徴

  • 刺激性下剤の1種である、大黄を含有していない漢方。
  • 人参で腸管血流を改善することで、運動を改善
  • よく手術後の腸管麻痺に使用
  • 特にガスがたまる感じの腹部膨満に有効
  • 高齢者でも安心

副作用や使用上の注意点は?

  • 気軽に使える漢方薬ですが、腸管運動が弱い方はあまり効果が得られないので、その場合は刺激性下剤との併用がおすすめ。

選ばなかった下剤

大黄、センナ、アロエなどの刺激性下剤

  • 日本では最も頻用されている刺激性下剤ですが、大腸粘膜が黒くなるメラノーシスと呼ばれる変化、それに伴う大腸腺腫・大腸癌の関連、腸管運動の低下、腸管の伸長などの可能性といった報告があります。
  • 現在は否定する意見も多いですが、そのような報告から当サイトでは選外としました。

浣腸、坐薬

即効性があり、緊急時にはとても有効なのですが、しっかり指導を受けない上で投与すると、下記のようなリスク6)があり、当サイトでは選外としました。

  • 迷走神経反射といって、急に直腸で内圧が高まると血圧が低下し、気分不良や意識障害が生じることがある。
  • 浣腸で直腸粘膜を傷つけたり、圧が高まることで避けて、穴があいてしまうことがある。
  • 浣腸の際に粘膜を傷つけることで、血管内に浣腸の成分が入り、腎障害を起こすことがある。

おすすめの使用順番や、
医師に相談すべきタイミングは?

① 腹痛・腹部不快感を伴う便秘の方、もしくは便はそれなりに出るけど排便時の困難感・残便感のある方。

② 排便回数が減少、もしくは硬便で出しづらい方。

の2パターンで分けて考えます。

上記のような流れで考えていただければと思います。

ポイントとして

①のようなおなかに不快な症状がある方は、便だけ出しても問題の症状が改善しないことがしばしば見られます。

便を出す前に、腸内環境の改善や、腸の血流を改善していくことから始めるのがいいでしょう。整腸薬や大建中湯は使いやすく、かつ下剤と併用しても問題ありません

酸化マグネシウムと同系統のお薬では、腹痛やお腹の不快感がある方では便回数が増えても腹痛・腹部不快感を改善しないとの報告があり7)、使ってもいいのですが、症状が改善しない場合は短期的な刺激性下剤を使用することをお勧めします。

②のように便の回数が少ない、硬便で出しづらい方は下剤による症状改善がかなり期待できます。
高齢や腎機能低下した方以外では使いやすい酸化マグネシウムから使用し、効果が十分でない場合は腸内環境改善・腸管血流を改善、それでも排便が充分でない場合、短期で刺激性下剤を使用してください。

まとめ

上記に上げたお薬は、注意事項がシンプルなものと、効果がわかりやすく、そのため状況に合わせて調整しやすいように薬効成分が基本的に1種類であるものを選んでいます。

あくまで病院にかかる時間がない方や、軽症の方に向けた薬物選択になります。

下剤よりも優先すべきは運動や食事、排便姿勢です。これらについても後々解説していきますね。

参考文献

1)日本消化器病学会関連研究会.慢性便秘の診断・治療研究会.慢性便秘症ガイドライン2017.東京:南江堂;2017.

2)Sun SX, Dibonabentura M, Purayidathil FW, et al. Impact of chronic constipation on health-related qulity of life, work productivity, and healthcare resource use: an analysis of the National Health and Wellness Survey. Dig Dis Sci. 2011; 56: 2688-95.

3)Chang JY, et al:impact of functional gastrointestinal disorders ON survival in the community. Am J Gastroenterol, 105:822-832,2010

4)Honkura K, et al:Defecation frequency and cardiovascular disease mortality in Japan: The Ohsaki cohort study. Atherosclerosi, 246:251-256, 2016

5)Wakai E, et al: Risk factors for the development of hypermagnesemia in patients prescribed magnesium oxide: a retrospective cohort study.J pharm Health Care Sci,5:4,2019

6)佐々木 巌, 他:浣腸・坐薬の使い方と注意点. medicina 57:1501-1507, 2020

7)Chapman RW, Stanghellini V, Geraint M, et al. Randamized clinical trial: Macrogol/PEG 3350 plus electrolytes for treatment of patients with constipation associated with irritable bowel syndrome. Am J Gastroenterol. 2013; 108: 1508-15.

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