便秘

専門医が本気で考えてみた 便秘解消のために、日常生活でできることTop 5

mitsuguma

日々、おなかの病気を診ているミツグマです。

今回は、多くの方を困らせている便秘で

  • 便秘はたまに困っているけど、病院に行くほどではない
  • 便秘だけど、できる限り薬は使いたくない

と言った方のために、

便秘解消のために日常生活でできる行動を5つに絞って、ランキング形式でお届けします。

巷で広告されている怪しい民間療法やサプリメントは排除して、医学的根拠がベースにあるもののみをお伝えします。

第5位 水分摂取

ポイント
  • 十分な食物繊維摂取との併用が重要
  • 食事とは別に、最低1Lはとりましょう

脱水の方には効果があるといった論文は散見されます。

食物繊維や運動との併用での効果はある程度根拠があります1)

しかし、水分摂取をしっかりした人としていない人の比較論文では、
他の要因(食物繊維摂取など)の影響を排除すると、便秘のリスクにあまり差がでていない2)とする報告もあります。

各国のガイドライン(ヨーロッパ、フランス、スペイン、韓国など)でも、
十分な水分摂取は
脱水の方に対して、
もしくは
十分な食物繊維摂取と併用する場合
に便秘の改善効果がある、という記載にとどまっています。

しかし、一般的に便の75%は水分であり、5-10%水分量が低下することで、排出しづらい硬便となります。
心臓や腎臓などで水分摂取が制限されている方でなければ、水分を取って排便に悪いことはないでしょう。

  • 水分摂取量は、食事とは別に、水分だけで摂るもので最低1Lは摂ることが望ましいです。
  • 体格が大きい、夏で気温が高い場合には便の硬さを見て増やしていきましょう。

水分摂取単体での便秘解消の根拠はあまりなく、第5位としました。

第4位 運動

ポイント
  • 週に2-3回~毎日、20-30分のウォーキングを
  • 立ったり座ったり、便にかかる重力に変化をつけるだけでも重要

週3回~毎日、だいたい20-30分歩いた場合の便秘の改善を検討した論文を集めた研究では3)、便秘は2.42倍改善しています。

また、20代の健康な方10人で、35日間、すべての行動をベッド上で行うようにした研究で4)、食事栄養はバランスよく調整し、十分な食物繊維をとっても、60%の方で便秘を発症していました。これは極端な研究方法ですが、若い方でも体を動かさないと便秘になってしまうことを示した研究です。

現場でも実際に、入院して活動量が減ることで便秘を発症、あるいは悪化することを肌感として感じます。

運動は、どうしても被験者自身が運動している自覚を持たないまま研究ができないので、バイアスはかかり、エビデンスレベルが低く、第4位としました。

第3位 朝食を食べる

ポイント
  • 決まった時間に朝食を食べましょう。

最近若い患者さんで、ダイエットで朝食を抜いたり、断食で朝・昼を欠食したりされる方がしばしばいらっしゃいます。

平成29年の厚生労働省調査では、朝食の欠食率は男性 15.0%、女性 10.2%で、年齢階級別にみると、男女ともにその割合は 20 歳代で最も高く、それぞれ男性 30.6%、女性 23.6%となっています5)

食物が胃に入ると、胃で強い蠕動運動が起こり始めますが、
これが大腸の蠕動促進につながります。

胃-結腸反射と言われるものです。

消化管運動は普段の規則的なリズムが大事と言われています。
規則正しい生活も重要ですので、毎日決まった時間に、特に朝食だけは取りましょう。

第2位 食物繊維摂取

ポイント
  • サプリメントでなく、食事から食物繊維を摂取しましょう。
  • 1日あたり、小鉢4-5杯くらいの摂取を目指しましょう。

食事からの食物繊維摂取で、便秘リスクは2倍くらい下がるというデータがあります2)

サプリでも効果はあるの?

 
 

サプリはかなりお腹の中で膨張するので、お腹の張り感が強く出てくる、というデータがあり、効果も限定的です。研究における対象人数が多いと便秘に対する効果があまりはっきりしなくなっています6)

ということで、食物繊維はサプリより食事からとったほうがいいと思われます。

どれくらいとればいいの?

 
 

食物繊維摂取量は、1日あたり男性で20g、女性で18g摂ることが推奨されています7)

食物繊維には水溶性と不溶性があり、簡単に言うと

  • 水溶性は粘り気で便の形を適切に作り、かつ腸内細菌の調整もやってくれます
  • 不溶性は便の体積と水分の保持してくれます。摂りすぎるとお腹が張ってしまうので、腹痛・腹部不快感を伴う便秘ではむしろ悪化に働くことがあります

ということで、腹痛・腹部不快感を伴う便秘には不溶性は気をつけたほうがいいよ、という話ですが、あまり気にしすぎても食物繊維摂取が進まないため、腹痛がなければどっちを摂るかはそこまで気にしなくてもいい、というかほとんどの方はそこまで気にかけられないと思います。

ほうれん草のおひたし、ひじきの煮物、サラダといった野菜中心の小鉢1つで、だいたい4-5gくらいの食物繊維が摂れるイメージです。

小鉢を4-5杯くらいを目指しましょう。

第1位 排便時姿勢の改善

ポイント
  • 足台を使って足を上げて、前かがみになり腹圧をかける、正しい姿勢で排便を行いましょう。
  • 体勢が辛い方は、手すりをつけることも考えましょう。

便秘の方で、食事や運動は気をつける方が多いですが、姿勢を気にかける方はあまりみません。

食事や運動で便秘が改善する方はいますが、限定的です。

姿勢については、姿勢だけの改善で便秘の完全解消までになる方が半数8)、改善感は多くの方が持つようです。

大切なのは足を上げて、前かがみになり、腹圧をかけること。

足を上げることで、直腸と肛門の角度が大きくなり、骨盤底が下降して、排便が促されます。

いわゆる「考える人姿勢」が有効です。

トイレの形は決まっており、和式トイレなら自然にこの形になるのですが、洋式トイレで座っている際に足をあげるのはできても、同時に排便まで行うのは若い方でも難しいです。

そこで、トイレ用足台をおすすめします。

トイレ用足台で、排便時間の短縮、いきみや残便感を有意に改善させることがわかっています9)

排便時間の短縮は,直腸・肛門への負担の軽減、排便行為そのものの心理的・時間的負担が少なくなり、排便行為へのハードルが下がります。

いきみの改善は、便秘最大の問題である、いきみによる高血圧で脳血管疾患が増加することも抑制します。

こちらの足台は幅が広く、大人でも足が置きやすいのと、高さが変えられるので、体の大きさに合わせて高さを調節できます。

値段は高めなので、また関連商品でもう少し安いものから、と考える方は

をおすすめします。

仕事中だったり、めんどくささで便が出そうになったときに

便意を我慢して、便秘になったという話をよく聞きます。

便意を我慢すると、直腸に便が来たときに便が出る、と感じるセンサーが鈍くなり、便意を感じづらくしてしまいます。

トイレの姿勢を楽に、かつ安全にするために、トイレ用足台

さらに、特に高齢者ではアームレスト型手すり、前方ボード手すりをおすすめします。手すりがあることで立ち座りの補助ができ、排便時にもたれかかることで排便がさらに楽に、安全になります。

前方ボード手すりでは、前傾してさらに排便しやすい姿勢になります。

使用しないときや、便座に移動する際は、跳ね上げて収納ができます。

まとめ

家でできる便秘解消のための行動を、ランキング形式でまとめました。

なるべく多くの文献をもとに、根拠の強いものから順位をつけていますので、1位から順に試していただければと思います。

まずはこちらで列挙したものを試していただき、それでも改善が乏しい場合は、病院で処方してもらう、市販薬を試す、などしていただければと思います。

市販薬に対してはこちらの記事を参照ください。

これからもお腹の悩みにかかわる有益な情報を発信していきます。

参考文献

1)Anti M. Hepatogastroenterology. 1998; 45: 727-32

2)L shen. J Hum Nutr Diet. 2019 Aug; 32(4): 422-431

3)Gao R et al. Scand J Gastroenterol. 2019 Mar 7: 1-9.

4)Lovino P, Chiarioni G, Bilancio G, CXirillo M, Mekfavic IB, et al. (2013) New Onset of Constipation during Long-Term Physical inactivity: A Proof-of-Concept Study on the Immobility-Induced Bowel Changes. PLOS ONE 8(8): e72608

5)厚生労働省 平成29年「国民栄養・健康調査」の結果

6)Christodoulides S, et al. Aliment Pharmacol Ther. 2016; 44(2)l 103-16

7)厚生労働省. 「日本人の食事摂取基準(2015年版)」

8)Takano S, Sands DR. Influence of body posture on defecation: a prospective study of ”The Thinker” position. Tech Coloproctol. 2016; 20: 117-21

9)Modi RM, Hinton A, Pinkhas D. Implementation of a defecation posture modification device impact on bowel movement patterns in healthy subjects. J Clin Gastroenterol. 2019; 53: 216-9.

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