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ステロイド(糖質コルチコイド)治療はドーピングになるの?

mitsuguma

筋トレが趣味の消化器専門医、ミツグマです。

ステロイド治療と聞くと、いわゆる筋肉増強剤として有名なステロイドを思い浮かべて、筋肉増強効果がある、と勘違いされる方が多いのではないでしょうか。

特にアスリートの方は、ステロイド治療と聞くとかなりの抵抗を感じる方が多いようです。

この記事では

といったことについて答えていきます。

糖質コルチコイドとアナボリックステロイドの違いは?

ステロイド治療で用いられるお薬は、多くはメチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾンといった糖質コルチコイドを用いた治療を指します。

糖質コルチコイドの主な働きは、炎症を抑える作用です。
使われる病気の代表的なものに関節リウマチ、喘息、アレルギー疾患、怪我、痛みなどがあります。
特にアスリートでは関節痛、喘息に多く用いられます。

筋肉増強剤として有名なアナボリックステロイドと同様、ステロイド核とよばれる構造を持った化合物の一種であるため、同じステロイド、という言葉が使われるのです。

「ステロイド」という言葉で筋肉増強効果がある、ドーピングになる、と勘違いされますが、実際にはその効果、副作用まで別物です。

糖質コルチコイドにはドーピング効果はないの?

これは、現時点ではあるとされています。

糖質コルチコイドの経口摂取で競技のパフォーマンス向上につながるというのは多くの文献に記載があります↓

Arlettaz A, Collomp K, Portier H, et al. Effects of acute prednisolone administration on exercise endurance and metabolism. Br J Sports Med 2008;42:250–4.

糖質コルチコイドの乱用は健康被害にもつながるため、なかなか多くのデータがありませんが、高用量で7日以上、使用すると、多幸感が得られたり、疲労感が軽減したり、と言った効果が確認されており、いわゆる「粘り強い運動」につながります。

一方で、副作用の一つとして、筋萎縮が起こる可能性がある、というのも、長い間の共通見解としてあります↓

Sue C. Bodine and J. David Furlow. Glucocorticoids and Skeletal Muscle. Advances in Experimental Medicine and Biology 872, DOI 10.1007/978-1-4939-2895-8_7

これって重要なことで、ボディメイク競技では筋肉が減るからむしろ悪になり、他の競技でも長期使用は筋萎縮するわけだから、パフォーマンス低下につながります。さらにはアスリートは本当に治療として必要な方も多いことから、治療目的だけど偶然にドーピング陽性となるケースが多い!

ドーピング陽性になるの?ならないためにはどれくらい中止したらいいの?

ドーピング陽性となる、禁止物質になります。

理由は先程述べたパフォーマンスの向上に寄与する点、有害な副作用が多いことから、古くは1985年から禁止薬物とされています。

ここも誤解が多いところですが、禁止物質は、アナボリックステロイドのように常に(AT ALL TIMES)使用が禁止されるものと競技会時(IN-COMPETITION)に禁止されるものと分かれます。

糖質コルチコイドは競技会時に禁止される薬物に当たり、参加する大会前日の午後11:59から競技会期間中、と定められています。普段のトレーニングで使っても、大会でのパフォーマンスには関わらず、競技におけるメリットが少ないのでしょう。

糖質コルチコイドの薬の種類と投与経路に応じて、ウォッシュアウト期間、すなわち体から消えてドーピング検査に引っかからないであろう期間が下記のように世界アンチ・ドーピング機構で提案されています。
元文献も見ましたが、かなり長めに期間を取ってあり、基本的には遵守すれば検査を気にする必要はないと思いますが、同サイトでは
「守ったからと言って保証はできない」とも記載されています。

参照:世界アンチ・ドーピング規程 2022禁止表国際基準 https://www.playtruejapan.org/entry_img/2022list_prohibited_v2.pdf

もし処方する医師がドーピング関連に明るくない場合は、上記サイトを直接確認してもらうことを強くおすすめします。

もしどうしてもウォッシュアウト期間中に使用する必要がある場合も、治療使用特例を申請して、認められれば使用ができます。詳しくは下記サイトをご覧ください。

JADA TUE取得の条件
https://www.playtruejapan.org/medical-staff/request/

競技会の種類にもよりますが、原則30日前までに提出が必要で、却下された場合はアンチ・ドーピング規則違反となります。結果が出るまで時間がかかるため、かなり余裕を持って申請するようにしましょう。

なにより、ウォッシュアウト期間を避けられるなら、TUEもほぼ不要ですので、医師によく理解をしてもらうことが重要です。

まとめ

Clker-Free-Vector-ImagesによるPixabayからの画像

生ける伝説、日本のトップボディビルダー合戸孝二選手は、38歳で眼底出血を発症した際
少しでもドーピングを疑われるようなことはしたくないと、ステロイド治療を拒否し、左目の失明を選んだという有名なエピソードがあります。

かっこよすぎて憧れてしまう話ですが、多くの方は失明は避けたいはず。
ステロイド治療がどうしても避けられない方が、平等に競技に参加できるように、正しい知識が広がって欲しいと思います。

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