がん検診とは?医者が解説する対策型検診と任意型検診の違いについて
消化器専門医である私は、毎日がん患者さんの診療を行っています。
がんの発見のされ方はさまざまで、症状が出てから初めて病院に行って、検査して見つかる、では手遅れであることが多いです。
早期発見で負担の少ない治療でがんが治った!というエピソードのほとんどは、偶然他の病気で検査をして見つかる、あるいはがん検診で無症状のうちにみつかることがきっかけとなります。
偶然はコントロールできませんが、がん検診を受けるか受けないか、どのがん検診を受けるか、についてはある程度の選択肢があり、選択次第で早期発見の恩恵が得られるのです。
そもそもがん検診とは?について、普段の診療との違いを説明した上で、
がん検診のどれを受けるべきかについて解説します。
がん検診の目的 診療との違いについて
がん検診の目的は、ズバリ受ける人のがんで亡くなる可能性を下げることです。
癌は症状が出てからでは、治療が間に合わない、あるいは外科手術や抗がん剤など、治療の負担が大きくなってしまうため、無症状のうちにみつけるための検査になります。
いわゆる診療とは違います。
診療ではそもそも苦痛など、悩みを抱えた方が希望して検査に来ます。
そのため、症状が出ており、病気を持っている確率がそもそも高い、かつ困っているから治してほしい!という希望があります。
→しっかり説明すれば、ある程度のリスクや負担がある検査も受け入れる方が多い。
ところが、検診では
症状がない、困っていない方が、自治体や職場に促される形で受診
症状がないことから、そもそも病気がなく健康な人が多いです。
万が一検査で被害を受けた場合、健康なのに検査で病気になるという最悪の事態が起こります。
→検診は検査の量・負担は最小限にしなければならない!
→結果、検診は見落としを許容して、病気の一部の人のみをすくい上げる検査にならざるを得ません。
検診の種類とは?対策型検診について
がん検診は大きく分けて、対策型と任意型に分けられます。
対策型検診は地域で行う、厚生労働省で定められた検診です。
簡単に言うと、決められた人が決められた時期に決まった検査しか受けられない、価格の安い検診です。
対象年齢や検診間隔、行う検査の種類が決められています。
公共予防対策なので、金銭面で補助があり、だいたい0-2500円で受けられます。
→検査は最低限、負担も最小限で、効果を最大に生む検査に絞っているため、特定のがんのリスクが高い人にとっては、不十分になる可能性があります。
任意型検診とは?
代表的なものは人間ドックで、自分で申し込んで、費用負担して行う検診です。
ルール内であれば、希望すれば提供している検査を誰でも受けられる、価格の高い検診です。
基本的に全額自己負担で、だいたい数万円~10数万円かかります。
無症状でなければいけませんが、受ける年齢や検診間隔にも縛りがなく、検査の種類もオプションが多いです。
必ずしもレベルが高い検診というわけではありませんが、
特に特定のがんのリスクが高い方、
例えば家族で大腸癌が多い、高齢になるまで全くがん検診を受けていなかった方など
ご家族でがんにかかったことがない方、今までしっかり検診を受けていた方と同じ検診では不十分です。
→任意型検診で適切に検査を選択することで、がんの早期発見に繋がる可能性を高めることができます。
職域におけるがん検診とは?
対策型と任意型の中間的な検診です。
対策型よりも若い方で受けられることが多く、
検診方法は任意型よりは選択肢が少ない、
費用は一部職場負担で任意型よりは安いことが多い。
役所や大企業を中心として、従業員に対する健康管理の一環として行われます。
一方で、中小零細企業では、がん検診を受けられない就労者も少なくなく、勤め先で全く内容が異なります。
検診方法は保険者もしくは事業所が決めて従業員に受けるよう勧告します。
まとめ
基本的には対策型検診が、最も身体的負担・時間・費用とがんの発見率の科学的根拠の高い、バランスの良い検診です
ただ、一部で特定のがんのリスクの高い方にとっては不十分な検査内容となることも少なくありません。
「毎年検診を受けていたのに、発見できなかったの?」
医者として苦しい質問を投げかけられるのは毎月のようにあります。
人によっては任意型検診や職域におけるがん検診を利用して、がんの早期発見対策を自己で考えていかなくてはなりません。
今後は特定のがんのリスクが高い方にとって、どのような検診の選択が適切か、情報発信をしていきたいと思います。